ワイン愛好家が読み続けたくなるニュースレターの作り方―
ワイナリー、小売店、そしてDTC(Direct-to-Consumer)型のワイン販売事業にとって、月に一度のニュースレターは、ただの業務のひとつではなく、お客様との大切なつながりの手段です。
うまく作られたニュースレターは、読者との関係を深め、リピート購入につながり、ブランドへの親しみを育ててくれます。
とはいえ、どの受信箱も常にたくさんのメールであふれています。読んでもらうには、しっかりと戦略を立てながらも、「読みたくなる内容」であることが大切です。
小さなテイスティングルームを運営している方にも、全国規模のワインクラブを展開している方にも、この記事にはヒントになる情報がきっと見つかるはずです。
目的を明確にする
書き始める前に、まず考えてみましょう。
「今回のニュースレターで、何を達成したいのか?」
毎号のニュースレターには、明確な目的が必要です。ただ情報を詰め込むのではなく、「何のために送るのか」をはっきりさせることで、読者に響く内容になります。
ワイン業界でよくある配信の目的としては、たとえばこんなものがあります:
- 過去に購入してくれたお客様に、リピート購入を促す
- ワインクラブ会員との関係を深め、離脱を防ぐ
- 試飲会や店舗イベントなどへの参加を呼びかける
自社のワインやヴィンテージへのこだわり、ブランドとしての価値観を伝えることも、ニュースレターの大切な役割のひとつです。
ただし、一度にすべてを伝えようとしないことがポイントです。 たとえば、ある号では新しいリリースの背景にフォーカスし、別の号では次回開催予定のディナーイベントを特集する、といったように、ひとつのテーマに絞って構成すると、読者にも伝わりやすくなります。
最適な進め方としては、まず『中心となる目的』をしっかり決め、その目的に沿って内容を組み立てることです。
最後に補足的な案内(セカンダリーのCTA)を添えるのは問題ありませんが、中心となるメ発信内容や流れは一貫するようにしましょう。
購読者を理解する
「ワイン購入者」と「ワインクラブ会員」は、必ずしも同じとは限りません。さらに、イベントで登録はしたものの、まだ一度も購入したことがない見込み顧客が含まれている場合もあります。
可能であれば、メーリングリストを**セグメント(分類)**してみましょう。基本的な分類例は以下のとおりです:
- 初回購入者
- リピーター
- ワインクラブ会員
- 高LTV(ライフタイムバリュー)顧客
たとえば、過去にローヌブレンドを購入したお客様には、今月も似たブレンドスタイルのワインを紹介したり、ローヌ特集のテイスティングイベントにご案内したりといった、シンプルなパーソナライズでも十分効果があります。
コンテンツが「自分向け」だと感じられるほど、読者はニュースレターを開封し続けてくれる可能性が高まります。
文章の構成を決めておく
読者が「今月もこの流れかな」と予測できるようになると、ニュースレター全体がぐっと読みやすくなります。よく設計されたブレンドワインのように、毎号に一貫した“リズム”や構成があることで、読者に安心感を与えることができます。 たとえば、以下のような構成は、店舗の規模に関係なく多くのワイン関連ビジネスで活用できるパターンです:
1: 今月のおすすめワイン紹介
毎月、1〜3本を目安に特集しましょう。テイスティングノートだけでなく、造り手のエピソードやその年の気候、ラベル名の由来など、「物語のある紹介」が印象に残ります。
2: 季節やイベントに合わせた提案
たとえば「4月に飲みたいワイン」「母の日に贈りたい1本」「春のピクニックにぴったり」など、季節感のある切り口は購買意欲につながりやすくなります。3: ワインができるまでの裏話
セラーの風景や収穫の様子、瓶詰め前の準備、畑からのひとことなど、ワイン製造の一コマを垣間見せるコンテンツは、ブランドへの信頼感や親近感を高めるうえで効果的です。4: 今月のご案内・キャンペーン情報
今月のご案内・キャンペーン情報- 今月ワインクラブにご加入の方へ、ボーナスボトルをプレゼント
- 5月開催予定のワインメーカーズディナー、ただいまご予約受付中
- 2023年ヴィンテージ、数量限定で先行予約受付中
読者にとって「今行動する理由」が明確になるように意識するのがポイントです。
5: 明確なCTA(行動喚起)を添える
メールの最後には、1つだけでも具体的な行動の案内(CTA)を設けましょう。 たとえば、本文で3本のワインを紹介した場合、それらをまとめて確認できるリンクを1つ添えるだけでも、コンバージョンにつながりやすくなります。 こうした構成をあらかじめ決めておくことで、毎月のコンテンツ作成がスムーズになるだけでなく、読者の期待にも一貫して応えられるようになります。表現の方法とストーリー性を重視する
ワインはとてもパーソナルな存在です。ニュースレターも、単なる企業の宣伝ではなく、知識豊富なスタッフと会話しているような親しみやすさが大切です。まるで試飲会でお客様と直接話しているかのような雰囲気で書くのが理想です。フレンドリーでありながら、専門的で信頼感のある語り口が読者に響きます。
たとえば、収穫の現場に一緒にいるワイナリーの犬の話や、バレルルームで起きたささいな出来事など、そんな小さなエピソードがワインに思い出や感情を添えます。
「このワインを本当に好きなんだな」と伝わる文章は、それだけで読者の心に深く刻まれるでしょう。
読みやすく、クリックしやすい工夫をする
多くの読者はスマートフォンでニュースレターをチェックしています。そこで重要なのは、次のポイントです:- 段落は短めにし、見出しははっきりさせる
- ボトルやスタッフ、畑の魅力が伝わる写真を使う
- リンクやCTA(行動喚起)は2〜3個以内に絞る
ボタンが多すぎたり、長文が続いたりすると、特にモバイル画面では圧迫感を与えてしまいます。
シンプルで見た目も美しいレイアウトに、1〜2個の明確なオファーを加えるほうが、効果が出やすいでしょう。
写真は強力な武器です。ワインラベルのアップ写真や、働くスタッフの様子、自然光のあたる畑の風景などが人の目を惹きつけます。
デザイナーがいなくても、Canvaなどのツールや自社で撮影した高品質な写真を活用すれば、十分に魅力的な仕上がりになります。
配信のタイミングと頻度、そして効果的な運用方法
多くのワインビジネスでは、月に1回の配信がちょうどよいバランスです。読者に忘れられず、かつ過剰な負担にもなりません。【配信タイミングの目安】
- 配信は火曜から木曜の中日が比較的効果的です。
- 時間帯は午前10時〜11時ごろが無難なスタートポイントです。
実施するにあたって分析を重ねます。読者の好みや生活スタイルによって最適な時間は異なります。
開封率やクリック率、そして何より売上データをしっかり追いかけましょう。数値が落ちてきたら、件名やコンテンツ構成、配信タイミングの見直しが必要なサインかもしれません。 1回の結果に一喜一憂せず、長期的な傾向に注目することが大切です。
最後のヒントと、よくある落とし穴
ニュースレターの質を保つために、以下のポイントに注意しましょう:
- 「とりあえず配信する」は避けましょう。毎号に意味や目的を持たせることが大切です。
- 前置きが長すぎないように気をつけましょう。本題に早めに入り、読者の興味をつかみましょう。
- メーリングリストの拡大も継続的に行いましょう。試飲会やオンライン注文、イベントなど、あらゆる接点でメールアドレスを獲得する機会を活用しましょう。
上手に設計された月刊ニュースレターは、単なる販促ツールにとどまらず、ブランド体験の一部として、読者に「次の1本」が待ち遠しくなるような媒体になります。
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私たちはこれまで、世界各地のワインブランドと協力しながら、読者の心に届くキャンペーンを数多く手がけてきました。
御社の目標や課題に合わせて、どのように私たちの経験がお役に立てるか、ぜひ一度ご相談ください。